〈患者さんからDH久保田への手紙 1〉

平成9年8月、次男は誕生しました。
2ヶ月ほどして、妻の兄の病気が遺伝病の血友病であることが、どうしても気になって次男を病院で検査してもらうことにした。
検査結果は残念なことに血友病のB型と判明し、血液凝固率が2%しかなく、中等症と診断された。幸い2歳上の長男は血友病ではなかった。
血友病という病気は遺伝子の性染色体のX側の第8因子か第9因子に異常がある病気で、元々片方しかない男子にしか発症しないのがこの病気の特徴である。
子供の身の上に起こる不幸なことは親の身になって初めてわかる辛さだった。
妻と二人で今後この子に起こると思われる不測の事態に備えるべく、この病気の知識と予防策を検討した。関節内出血や頭蓋内出血は転倒事故防止や親の監視を強化するということで対処したが、口腔内の出血だけは防ぎようがないと思われた。
次男が誕生する一年ほど前から私は歯科医院のカウンセラーの方から歯茎の強化プログラムを受けていた。最初このカウンセラーの方から歯茎のハレや痛む箇所へ処置された時に驚く程の出血と痛みが有り、指定された歯ブラシで正しい歯磨きと歯茎マッサージが出来るようになるまで、かなり時間がかかった。
どうしても出血と痛みが付きまとうため、細かい部分がうまく出来ないのと、歯ブラシだけで、歯周病や虫歯から解放されるとは大人ほど理解できないと思うからだった。
特に指定された歯ブラシは一般的な歯ブラシよりナイロンが堅く、歯茎からすぐ出血してしまうからだった。それでもカウンセラーの方は根気よく笑顔を絶やさず指導してくれたので継続できたのだろうと今になると思い出される。
三ヶ月しないうちに出血もハレも痛みも治まってきた。それどころか、口臭もなくなり口腔内の衛生状態はかなりよくなっていた。口臭がなくなると他人の口臭がとても気になり出すのがこの治療の特徴で、妻へカウンセラーの方を紹介するのもすぐだった。
私はすぐ次男の歯が生えてきた時から「歯茎固め」を実行出来ないか考えた。
血友病の患者は歯茎からの出血が止まりにくいため、子供のころからあまり強く歯磨きをしないので虫歯の子供が多いと文献に書かれていた。それに歯の生え替わりも厄介で必ず出血するので親族が頭を痛める問題だった。
「それなら歯茎を強化して虫歯のない出血しにくい堅く丈夫な歯に育ててしまおう」
すでに長男は小さな虫歯を治療していて、次男の乳歯が生え揃いだしたと同時に長男も「歯茎固め」を開始した。
さすがに初めから大人用の堅い歯ブラシは無理と思い一般的に子供用と言われている物を使用したが、子供の歯茎も大人の歯茎もあまり変わらないことがすぐに分かった。
三ヶ月は子供用を使用した。やはり痛みが少し出るのかイヤがって泣くこともあったが、心配していた出血も少ししか出ず、健常者の長男と比べると強く磨いた時の出血の時間が長かったが、何分も出続けるようなこともなく一番心配していたことに対し殆ど問題ないのが親としては嬉しかった。たぶん大人のように歯周病にかかっていない口腔内は歯茎のハレが少ないためと思われた。
出血も痛みも三ヶ月ほどで治まってきたので、毛先が尖っている、歯と歯茎の間に入りやすい大人用の歯ブラシに換えて、口腔内の殺菌をうがいで行うと言われている「デンタルリンス」を歯磨き粉代りに歯茎固めを行った。
歯が全て生えそろっていない二人は新しい歯が生えてくる時だけ少ない出血と痛みがあったが、それ以外は何も問題なく一年が過ぎた。
次男の第6臼歯が生え始めた時点で、カウンセラーの方が勧めてくれたナイロンが堅い歯ブラシを子供にも使用することにした。さすがに大人用と思っていた歯ブラシなので少し心配した。この歯ブラシは歯茎固めをしていない者が使用すれば、まず出血と痛みでイヤになるほど堅い代物だが歯茎固めをマスターするのには非常に重要なアイテムである。しかし子供に使用するのはやはり多少の心配はあったが一週間もしないで順応してしまった。この頃になると学校の歯科検診も始まるが一度も虫歯等の指摘がないばかりではなく、歯科医から「どうしてこんなに歯と歯茎がキレイなのですか?」と尋ねられるぐらいにキレイな歯茎の色だった。
血友病の子供にとって厄介なのが歯の生え替わり時期で必ず歯が抜ける前後に出血があり、親を悩ませる時期だからである。
私の次男の血友病の指定医院内に歯科がないため、通常の開業歯科へ行かねばならず、大半の歯科医は血友病のことを言うと診療を拒んでくる傾向にあった。歯の抜け替わり時期などは血液製剤による補充治療を行ってすぐに歯科へ行き、治療に際しアクシデントが生じても異議申し立てをしないという一筆書きをしなければ診療してもらえないのが現状である。
次男も5〜6歳ごろになると歯の生え替わりが始まった。乳歯がグラついている時期に出血が始まるので、補充治療をして歯科で抜いてもらうのが一番安全な処置である。しかしたいした出血はなかった。そればかりか抜いたあとの出血も少なくすぐ止まった。
堅く強い歯茎はこんな時も強い味方になってくれた。
私の回りの中高年の人たちが歯周病で歯を失い、義歯やインプラントなどでかなり高額な治療費を払い続けているのを見ても、私も妻も二人の子供もただ歯茎固めを実行し続けているだけで年間に歯科医院に支払うのは殆ど定期的な検査費用ぐらいで済んでしまう。本当にただ歯ブラシで歯と歯茎を鍛えているだけなのに。
歯茎固めを指導して頂いたカウンセラーの方に出会えたことは私の人生でも大きな大きなプラスでした。
私の妻も長男もそして血友病の次男も大変感謝しています。
今後もよろしく指導願います。
ありがとうございました。

平成16年12月

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